シングルマザーとして子どもを育てていくこととなった場合、一人暮らしとは異なり、子どもに関する様々な費用が発生します。そのため、月々の生活費はいくら必要なのか不安を抱える人も少なくないでしょう。
シングルマザーが安心して生活を送るためには、生活費の相場や受けられる公的助成などを事前に知っておきたいものです。
この記事では、シングルマザーの生活費の相場や受けられる公的支援制度、不安なく生活するためのポイントを解説します。
シングルマザーに必要な1ヵ月あたりの生活費
シングルマザーが子どもと一緒に暮らしていくためにかかる生活費の相場は、
- 子どもの年齢
- 子どもの人数
- 子どもの進学先
などによって大きく左右されます。
以下は、子どもが未就学児だった場合にかかる生活費の相場です。子どもの人数別にまとめています。
未就学児の子どもの人数 | 最低限必要な生活費 |
1人 | 13万円程度 |
2人 | 20万円程度 |
3人 | 25万円程度 |
表:子どもが未就学児だった場合にかかる生活費の相場
子どもの成長や人数が増えれば、その分食費や日用品費、教育費などといった生活費の負担も大きくなります。
また、上記は毎月固定でかかる最低限必要なおおよその生活費です。突発的に発生する費用は考慮されていません。
予期せぬ事情により急な出費が発生することも考えられますので、生活費とは別に収入の一部を貯金に回す必要もあります。
生活費の内訳
子どもの年齢や人数によって多少幅が出るものの、シングルマザーの生活費は毎月おおよそ13~25万円かかることがわかりました。では、この内訳は一体どのようになっているのでしょうか?
シングルマザーが暮らしていくためにかかる1ヵ月当たりの生活費の内訳は、大体以下のようになります。
内訳 | 費用 |
---|---|
家賃 | 5.0~8.0万円 ※公営住宅の場合は2.0~3.0万で済むことも |
水道・光熱費 | 1.5~2.0万円 |
食費 | 3.0万円くらい |
交際費 | 1.0~2.0万円 |
日用品・雑費 | 0.5~1.0万円 |
通信費 | 1.5~2.0万円 |
教育費 | 1.0~3.0万円 ※公立の場合、高校生まで |
医療・保険料 | 0.5~1.0万円 |
合計 | 14.0~22.0万円 |
ここからは、これらの生活費の内訳を費目別に解説します。
生活費の内訳①家賃
離婚後に実家に身を寄せる、持ち家がありローンを元夫が支払うという場合を除き、家計を占める割合が大きいのが住居費です。
住む地域や住居形態、どんな間取りでどのくらいの広さの家に住むかによって大きく異なりますが、住居費は平均5~8万円程度かかります。
なお、市営住宅や県営住宅などに住む場合は、ぐっと住居費を抑えることができます。公営住宅は民間の賃貸住宅よりも家賃が安く、場所によっては2~3万円程度に設定されていることも珍しくありません。
シングルマザーとして生活を営むにあたり、子育てのしやすさや治安、安全面、また自身の仕事のしやすさなども踏まえて、住むエリアや物件を検討する必要があります。
生活費の内訳②水道・光熱費
一般的には、1ヵ月あたり1万5,000円~2万円くらいは見積もっておいたほうが良いでしょう。
水道代、ガス代、電気代などの水道光熱費は、居住している地域や住居の広さ、季節などによって月ごとに変動がある費目です。
また、同じ条件の住宅に住んでいたとしても、子どもの人数が多いと光熱費も多くかかる傾向があります。
生活費の内訳③食費
食費は、子どもの人数や年齢によってかかる金額が変動します。一般的には人数が増えればそれに比例して出費が多くなります。
未就学児が1人など子どもの年齢が低ければ、1ヵ月あたり3万円程度、小学生以上の育ちざかりの子どもが2人以上いれば1ヵ月あたり4~5万円程度を目安にすると良いでしょう。
家計の費目の中では節約しやすい費目ですが、あまりにも節約しすぎると健康を損ねたり子どもの成長に影響が出る可能性があるため注意が必要です。
生活費の内訳④日用品・雑費・交際費
生活していく上では、さまざまな日用品も必要になります。ティッシュペーパーや洗剤など、日常生活で必要な雑貨などの費用として1ヵ月あたり5,000~1万円程度は用意しておきましょう。
また、突然の出費に困ることがないよう、冠婚葬祭費や交際費などもある程度備えておくと安心です。
その他にも子どもと一緒に出かけたり、旅行をするためのレジャー費も含めると、1ヵ月あたり1~2万円ほどは見ておきましょう。
生活費の内訳⑤通信費
固定電話や携帯電話、インターネット、NHKの受信料なども必要です。契約している通信の種類によりますが、通信費は1ヵ月あたり1万5,000~2万円程度用意しておきましょう。
固定電話を契約している人は少なく、代わりに子どもも携帯を持つ時代になってきているので、家族の人数分の携帯電話を契約するご家庭も少なくありません。
生活費の内訳⑥教育費
教育費は、子どもを通わせる学校によって大きく異なり、小学校から高校まで公立の場合は、給食費や学年費、PTA会費、高校の授業料などで1ヵ月あたり1~3万円ほどが必要です。
なお、公立の学校に通わせた場合は就学援助制度があるため、申請するとこれらの費用が援助されることがあります(所得制限等条件あり)。
一方、私立の学校に通わせた場合は、制服代や授業料など、公立の学校よりも多くかかる傾向にあり、一般的には1ヵ月あたり6~9万円程度になります。ですが、学校による差は大きくそれ以上かかるところもあります。
そして、教育費の中でも大学にかかる費用はさらに大きく、国公立大学で文系の学部に進学した場合は1ヵ月当たり5~7万円、私立大学で理系の学部に進学した場合は10~13万円となります。その差は学校によりますが、かかる学費の差は数倍もの違いです。
また、教育費は学校に関するもの以外に習い事の費用も含まれます。
高校や大学に進学するために塾に通うケースも少なくありません。どのような塾に通うかにもよりますが、1ヵ月あたり1~2万円、もしくはそれ以上が必要になります。未就学児のうちから習い事に通わせると、1ヵ月あたり5,000~1万円程度必要です。
生活費の内訳⑦医療費・保険料
医療費については、自治体によって条件は異なるものの、医療費助成制度があるためそれを利用すれば負担は軽減されます。
また、勤務形態がパートやアルバイトなどで社会保険に加入できない場合は、自分で国民年金(16,590円・令和4年度)や国民健康保険(所得・年齢によって保険料は異なる)に加入する必要があります。
他にも、医療費や子どもの将来に備える学資保険、自分に万が一のことがあったときのための生命保険の検討が必要です。
加入する年齢・保険種類によって保険料の負担額は異なりますが、1ヵ月あたり5,000~1万円程度は用意しておくと安心です。
シングルマザーの平均収入はどのくらい?
厚生労働省の「平成28年度ひとり親世帯等調査結果」によれば、シングルマザーの平成27年の平均年間収入は243万円でした。
この金額には、自分が働いたことで得た収入以外に、元夫からの支払われる養育費や児童手当などの助成金も含まれます。シングルマザー自身が働いて得た勤労収入は年間200万円となっており、1ヵ月に換算すると約16万円です。
1ヵ月の生活費として最低でも13万円程度はかかることを考慮すると、自身の収入から生活費を引いた3万円程度が貯蓄に回せる金額となりますが、子どもの成長につれて教育費がかかるようになってきたり、子どもの数が多ければその分だけ生活費もかかり貯蓄は難しくなるので、シングルマザーにとっては厳しい状況であると言わざるを得ません。
また、同居している親族がいる場合でも収入は348万円となっており、厚生労働省の「平成28年度国民生活基礎調査」における児童のいる世帯の年間平均所得707.6万円の約半額程度です。
その要因として、シングルマザーの勤務形態は、
- 正規の職員や従業員は44.2%
- 自営業が3.4%
- パートやアルバイトなどの非正規雇用が43.8%
となっており、約半数が非正規雇用であることが収入の少なさに繋がっているといえます。
シングルマザーが収入を安定させる方法
ここではシングルマザーが安心して暮らすために、収入を安定させるポイントを解説します。
正社員として働ける職場を探す
パートやアルバイトといった非正規雇用の仕事では、いつ解雇されたり給料を減額されたりするか分かりません。こうしたことを避けるために、シングルマザーが正社員として働ける職場を探すことがポイントです。
しかし、いきなり正社員雇用を目指すのはかなり難しいでしょう。そのため、
- まずは一般企業のアルバイト採用を目指す
- 業務に役立つ資格を取り、スキルアップを図る
- アルバイトから契約社員、正社員登用を目指す
時間はかかりますが、このようなキャリアパスで正社員を目指すのも一つの手です。
子どもの一時預かり制度を活用し自身のスキルアップの時間に充てたり、国が用意している「教育訓練給付金」制度を活用し、受講費用の負担を減らしたりなどと工夫し、正社員登用を目指しましょう。
雇用保険の被保険者であれば、アルバイトでも教育訓練給付金を受けることはできます。その他条件もありますので、詳細はハローワークに相談するようにしましょう。
なお、正社員として働くと社会保険料の負担が大きくなるものの、予期せぬ病気や怪我をした際の保障もあるので不安は少なくなります。
児童扶養手当は子どもが18歳になるまでしか支給されません。大学に通う年代は最も費用がかかるため、安定した収入が得られる仕事をしておくと、その後も安心して生活できます。
養育費について取り決め、きちんと支払ってもらう
「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」によれば、養育費を現在も受けていると回答した人は24.3%、過去に受けたことがあると回答した人は15.5%となり、両方を合わせて約4割の人が養育費を受け取った経験があります。
しかし、養育費を受けていたシングルマザーの内、約4割が途中から養育費を受けられなくなっており、多くは養育費に関する取り決めをしていないのが実態です。
こうしたことを避けるためには、離婚の際に養育費に関してしっかり取り決めを行い、法的な拘束力のある公正証書に記載しておくことがポイントとなります。また、養育費の支払いが滞った場合に備えて、養育費保証サービスを利用するのも選択肢の1つです。
生活費を節約するためのポイント
シングルマザーが安心して暮らすために、節約のポイントを紹介します
毎月かかる固定費を見直す
まずは、生活費の中で毎月かかる固定費を見直すようにしましょう。特に、支出の中でも大きな割合を占めるものから見直すべきです。
見直すことで節約に直結するものは、
- 住宅費
- 通信費
などがあります。
住宅費を抑えるためには、民間のアパートなどよりも家賃が安く設定されている公営住宅に住むことが一番です。
公営住宅は人気が高く、地域によっては数百倍の倍率というところもありますが、ひとり親世帯であれば優遇してもらえる地域もあるため、シングルマザーの方はぜひ検討してみましょう。
また、通信費を抑えるには、現在の使用状況の確認と契約しているプランの見直しが効果的です。
毎月の使用料を確認したら、
- 「思っていたよりもギガを使っていなかった」
- 「不要なサポートサービスが付帯されており、その利用料が毎月発生していた」
などということもよくあります。
自身の使用状況に合った契約内容になるように見直しを行いましょう。また、格安SIMや三大キャリアの新プランを活用することも、携帯料金を大幅に節約できるため効果的です。
固定費の支払いをクレジットカード払いにする
光熱費や通信費などといった毎月発生する公共料金の支払いには、クレジットカードを活用するといいでしょう。
ポイント還元率の高いクレジットカードで支払いをすると、固定費の数パーセントをポイントやマイルで還元されるのです。
例えば、毎月2万円の公共料金を支払っているシングルマザーがポイント還元率1%のクレジットカードで支払いをした場合、毎月200ポイントを受けることができます。年間にすると、2,400ポイントの還元を受けることができるのです。
また、最近では、
- 家賃の支払いをクレジットカードで行うことができる
- カード会社の提携店舗で買い物をするとポイント還元率が上がる
- 特定の期間に買い物をするとポイント還元率が上がる
などといったキャンペーンを行っている事業者も増えているようです。
公共料金の他にも家賃や食費、日用品費など毎月発生する生活費もクレジットカード支払いにできた場合、大量のポイント還元を受けることができ、かなりお得ですよね。
獲得したポイントを他の日用品の購入に充てることができれば、生活費の節約にも繋がります。さまざまなサービスを上手に利用して費用を抑える工夫をしていきましょう。
シングルマザー向けの手当や公的制度を活用する
シングルマザー向けの助成制度を活用して、大きな固定費や突発的な出費の負担を軽減できる場合があります。
例えば、
- 住宅費の助成制度
- 医療費の助成制度
- 母子父子寡婦福祉資金貸付制度
です。
これらを利用できれば、家賃や医療費の負担を大幅に抑えることができますし、進学費用などといった大きなお金が必要になったときでも自治体から必要金額を無利子、または低金利で借りることができます。
自身がどのような公的助成が受けられるのかを調べるようにしましょう。この他、家計を引き締めるためにも家計簿をつけて無駄な支出の見直しをしてゆくのも良いでしょう。
シングルマザーが活用できる助成制度は、後ほど詳しくご紹介します。
シングルマザーが受けられる手当や公的制度
前述の通り、シングルマザーは厳しい経済状況にあるケースが少なくありませんが、それを支援する公的制度があります。
受給対象だった場合、積極的に手続きを行い利用しましょう。ここからは、シングルマザーが受けられる公的制度について解説します。
シングルマザー向けの手当・制度①児童手当
シングルマザーだけに限らず中学校卒業まで(15歳の誕生日が来て最初の3月31日まで)の子どもを養育するすべての人が対象となる国の公的支援制度で、基本的に育てている子どもの年齢に応じて支給額が変わります。
1カ月分の支給額
- 子どもが3歳未満:1人当たり1万5,000円
- 3歳以上小学校修了前までの子ども:1人当たり1万円、第3子以降は1万5,000円
- 中学生:一律1万円
なお、児童手当を受け取るためには、扶養親族等の人数ごとに設定された所得制限をクリアしている必要があります。所得制限の上限を超えた収入がある場合、特例給付として児童1人あたり月額5,000円が支給されます。
シングルマザー向けの手当・制度②児童扶養手当
児童扶養手当は、母子家庭もしくは父子家庭を対象として国が行う公的支援制度です。離婚、死別など母子家庭や父子家庭になっている理由は問われず、18歳になって最初に3月31日を迎えるまでの子どもを養育している人に支給されます。
支給される金額は所得によって異なり、支給は、認定請求した翌月から行われる仕組みです。シングルマザーにとっては重要な手当ての一つと言えるでしょう。
子どもが1人の場合
- 87万円未満:全部支給(月額4万3070円)
- 87万円~230万円未満:一部支給(月額1万160円~4万3060円)
- 230万円以上:支給なし
子どもが2人の場合
- 125万円未満:全部支給(1人目:月額4万3070円 2人目:月額1万170円)
- 125万円~268万円未満:一部支給(1人目:月額1万160円~4万3060円 2人目:月額5,090円~1万160円)
- 268万円以上:支給なし
子どもが3人以上の場合
- 養育者の所得:子どもの人数による
- 支給額:3人目以降1人につき、全部支給は月額6,100円、一部支給は月額3,050円~6,090円
上記は令和4年4月~令和5年3月の金額であり、支給される金額は、物価の変動をふまえて毎年4月に改定されます。
シングルマザー向けの手当・制度③ひとり親家庭の住宅手当
ひとり親家庭の住宅手当は、子どもを育てている母子家庭または父子家庭で、賃貸物件に住んでいる世帯を対象としており、家賃の一部を助成する制度です。支給額の一例として東京都千代田区は5万円、新宿区は3万円です。
ただし、全ての自治体で実施されているわけではなく、支給条件や支給額も自治体ごとにさまざまです。例えば、母子家庭もしくは父子家庭であること、家賃の上限を定めている場合や居住年数や所得制限などの条件があります。
シングルマザーにとっては必ずチェックしておきたい手当の一つです。まずは、制度自体準備されているかどうかを確認し、詳細は各自治体に確認をすると良いでしょう。
シングルマザー向けの手当・制度④ひとり親家族等医療費助成制度
ひとり親家庭の医療費助成制度は、母子家庭もしくは父子家庭の親子が医療機関を受診した際に医療費の助成を受けられる自治体の制度です。
所得が一定額を超えていると助成の対象外になることがあったり、その要件は自治体ごとに異なるため確認が必要です。1ヵ月あたりの通院限度額は1万8,000円程度、年間14万円程度の内容が多くなっています。自治体の助成費が受けられれば自己負担額を抑えることができ、高額な医療保険などに加入せずに節約できます。
助成を受けるためには、市区町村役場に申請してひとり親医療証(マル親医療証)の交付を受け、医療機関を受診した際に保険証と一緒にマル親医療証を提出することが必要です。
シングルマザー向けの手当・制度⑤母子父子寡婦福祉資金貸付制度
母子父子寡婦福祉資金貸付制度とは、20歳未満の子どもを扶養しているひとり親が利用することができる貸付制度です。 この貸付制度で修学金の貸し付けを受ける場合、
- 無利子で貸し付けを受けることができる
- 償還期間は20年以内
と設定されています。
また、修学金だけでなく、
- 就学時の一時金
- 引越し時の一時金
- 就職時にかかる一時金
などと、様々な用途でも貸し付けを受けることができます。
銀行や消費者金融などから貸付を受ける前に、まずはひとり親家庭が優遇されているこの制度を検討するようにしましょう。
(まとめ)公的扶助や養育費保証を積極的に活用しよう
離婚してシングルマザーで子育てをしていくには、収入面を含めさまざまな困難が待ち受けています。
生活費を節約するのはもちろん、子育てをしながら続けていく仕事のことを考えつつ、シングルマザーを対象とした公的助成の積極的な活用も視野に入れていきましょう。
また、子どもを健全に育てるためにも離婚相手から養育費をきちんと支払ってもらうことも大切です。しかし養育費は途中から払われなくなるケースも少なくないため、養育費保証サービスを利用すればより安心して暮らせるのではないでしょうか。
特にこれから離婚する方は、生活費を計算したり子どもの成長や自身のライフプランをシミュレーションした上で、安定した生活が送れるよう事前に準備を進めてゆきましょう。