「最初は軽い気持ちで利用した消費者金融のカードローン。あれよあれよという間にどんどん利用回数が増えてしまって、今では借金残高300万円…。とても自分では返せそうにないけど、どうしたらいいんだろう…」
最近はアルバイトや非正規社員として働いている人でもカードローンが手軽に使えるようになっていますが、このようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際、裁判所が発表している「司法統計」によると、裁判所に対して自己破産の申し立てをした人は6万8791人で、2年連続で増加しています。
自己破産をはじめとする「借金を法律手続きによって減額してもらう方法」のことを債務整理と呼んでいますが、債務整理を選択する場合には、手続きのおおまかな全体像を理解しておくことが大切です。
この記事では、借金の返済が難しくなってしまった人が債務整理の手続きを行った場合、どのような流れで手続きが進んでいくものなのかについて具体的に解説します。

これから債務整理の手続きを行うことを検討している方は、ぜひ参考にしてみて下さい!
債務整理の手続きの流れ
債務整理には、大きく分けて任意整理・個人再生・自己破産の3つの方法があり、それぞれで手続きの流れが異なります。
特に、個人再生と自己破産は裁判所に申し立てをして手続きを行う方法ですから、必要書類に不備がないように注意が必要なほか、手続きにかかる労力も大きくなる点に注意が必要です。
(※任意整理では裁判所を通さずに債権者側と直接交渉を行いますので、手続きに必要な労力は小さくなります)
なお、多くのケースで、債務整理は弁護士や司法書士といった専門家に依頼して手続きを進めていくことになります。

以下では専門家に依頼した場合を前提に、債務整理手続きの大まかな流れについてみていきましょう。
任意整理の手続きの流れ
債務整理の3つの方法のうち、任意整理を選択した場合には、おおよそ次のような流れで手続きが進んでいきます。
- ①専門家事務所での無料相談
- ②専門家と正式に委任契約を結ぶ
- ③専門家から債権者に対して受任通知を発送
- ④債権者に対して借金の利用履歴を開示請求
- ⑤過払い金有無の確認と返還請求
- ⑥借金減額の和解案を提示し、交渉を行う
- ⑦和解契約締結=借金減額が完了
- ⑧和解契約の内容に従って返済を開始

それぞれの内容について順番に見ていきましょう。
①専門家事務所での無料相談
任意整理の手続きは、専門家事務所(法律事務所)での無料相談から始まります(これは他の債務整理の方法でも同じです)
ただし、いきなり専門家の事務所を訪問しても不在のこともありますから(事務員しかいない状態)、訪問前に必ずアポイントメントを取っておくようにしましょう。
専門家とのアポイントメントは、専門家事務所が運営しているホームページの申し込みフォームから24時間いつでも行えるケースが多いです。
※フォーム送信後、営業時間にメールや電話で連絡が入りますから、指定される持ち物をもって約束の日時に事務所を訪問しましょう。
②専門家と正式に委任契約を結ぶ
専門家の事務所を指定された日時に訪問したら、専門家に無料相談をしてもらいます。
債務整理手続きの流れや、必要になる費用、減額が期待できる借金の内容についてくわしく説明があると思いますから、疑問点はこのタイミングで解消しておくようにしましょう。
無料相談後、債務整理の手続きを行うことを選択した場合には専門家と正式に委任契約(債務整理の手続きを代行してもらう契約です)を結びます。
この時点で着手金を支払うケースが多いですが、着手金が無料である事務所や、後払いが可能な事務所もありますから相談するようにしましょう。
③専門家から債権者に対して受任通知を発送
専門家と正式に委任契約を結んだら、専門家から借金の債権者に対して「受任通知」を送ってもらいます。
受任通知とは、「この人(あなた)は債務整理の手続きを開始しました」という連絡のことです。
債権者が消費者金融や銀行などの金融機関である場合には、貸金業法という法律で「受任通知を受けた場合、債務者本人(あなた)に対して借金の督促をしてはいけない」というルールがあるのです。
そのため、受任通知が債権者に対して到達した段階で、あなたに対しての借金督促がすべてストップすることになります。
借金返済が停止している間、弁済資金を積み立てておく
受任通知到達~任意整理手続き完了の間までは、借金の返済を行う必要がありませんので、生活がかなり楽になるでしょう。
しかし、これまで借金返済に充てていたお金は、任意整理手続き完了後の返済に向けて貯めておかなくてはなりません。
(これを「弁済資金の積立」などと呼びますが、簡単にいえば浮いたお金は貯金しておきましょうということです)
任意整理の手続きが完了した後には、減額してもらった借金をきちんと返済していく必要がありますので、必ず積み立てを行っておきましょう。
④債権者に対して借金の利用履歴を開示請求
受任通知発送後、今度は「借金の利用履歴」の開示を債権者側に要求します。
これによってあなたが過去に利用した借金と、返済した正確な金額をすべて確認できる状態になります。
⑤過払い金有無の確認と返還請求
利用履歴が確認できた時点で、場合によっては「過払い金」が発生していることがあります。
過払い金とは、「債権者側が違法に高い利息をとっていたために、本来は支払わなくても良いのに、払ってしまったお金」のことです。
これは言うまでもなくあなたのお金ですので、債権者に返還請求を行うことによって借金の残高から差し引きしてもらうことが可能です。
例えば、借金の残高が100万円ある状態で過払い金の計算をしてみたら30万円あった、という場合、「借金残高100万円から過払い金30万円を差し引きした70万円だけを今後支払えばOK」としてもらえるわけです。
なお、過払い金は、引き直し計算という手続きによって専門家に計算してもらうことができますので、あなた自身が計算を行う必要はありません。
必要な資料を専門家に提出したら専門家から過払い金の有無について報告があると思いますので、指示に従うようにしましょう。
⑥借金減額の和解案を提示し、交渉を行う
借金の正確な金額を把握し、過払い金の有無の確認ができたら、いよいよ今後の返済計画について債権者と交渉を進めていくことになります。
具体的には、「これだけの金額であれば毎月無理なく返済していけるので、減額を認めてほしい」という内容の和解案を債権者に提示します。
金融機関相手の任意整理の場合、多くの場合は「利息の免除を認めてもらう」という和解案を提示することになります。
⑦和解契約締結=借金減額が完了
債権者側が、専門家が提示した和解契約に同意した場合、借金の減額が決定します。
同意の内容は和解契約として書面にまとめられますので、あなた自身がサインをしましょう。
和解契約書には、減額後の借金総額や、毎月の返済額などが細かく記載されていますので、必ず内容を確認しておくようにしてください。
この時点で、依頼した専門家との委任契約も完了となりますから、あらかじめ定められた費用の支払いを行いましょう(専門家費用については分割払いなどが認められるケースが多いです)
⑧和解契約の内容に従って返済を開始
和解契約の締結によって借金の減額手続きが完了していますので、ここからは指定された返済額を毎月返済していくことになります。
手続き中に弁済資金として貯めておいたお金を返済に充てるとともに、毎月の支払額を生活費から優先的に支出するようにしましょう。
もし、和解契約の内容に従った返済ができない場合には、和解契約そのものが取り消されてしまう可能性もありますから注意が必要です。
個人再生の手続きの流れ
次に、個人再生を選択した場合の手続きの流れを見ておきましょう。
個人再生を選択した場合、おおよそ現在の借金残高の5分の1程度まで負担を減らしてもらえますが、そのためには裁判所に「個人再生計画」という借金返済計画を認めてもらう必要があります。
裁判所があなたの個人再生計画認可の決定を出すまでには、おおよそ次のような手続きを進めていかなくてはなりません。
- ①専門家事務所での無料相談
- ②専門家と正式に委任契約を結ぶ
- ③専門家から債権者に対して受任通知を発送
- ④債権者に対して借金の利用履歴を開示請求
- ⑤過払い金有無の確認と返還請求
- ⑥借金総額や財産、生活費の収支状況を調査します
- ⑦個人再生の申し立て
- ⑧個人再生委員の選任と打ち合わせ
- ⑨履行テストの開始
- ⑩裁判所による個人再生手続き開始の決定
- ⑪債権者一覧表の提出
- ⑫再生計画案の作成と提出
- ⑬再生計画の認可(=手続き完了)
- ⑭再生計画に基づいて弁済を開始
①~⑤に関しては任意整理と同様ですので説明を省きます(上の「任意整理の手続きの流れ」を参照してください)
以下では⑥~⑭の内容について順番に説明します。
⑥借金総額や財産、生活費の収支状況を調査します
借金の残高が確定し、過払い金の返還請求が完了したら、その時点でのあなたの財産や借金の状況・収入と生活費の状況を調査して裁判所に報告する必要があります。
裁判所は、報告資料を見て「この人は、借金を減額してあげさえすれば、完済の見込みがあるか?」を判断するというわけです。
具体的には、減額した後の借金を、3年間(36回払い)で完済できるかどうかが判断基準となるでしょう。
個人再生では、例えば「借金100万円~500万円の場合は100万円まで減額」・「借金500万円~1500万円の場合は5分の1の金額まで減額」というように減額のルールが決まっています。
例えば、手続き開始時点で1000万円の借金があるという方であれば、「800万円を減額して残りの200万円を支払えばよい」としてもらえるわけですが、この200万円を36回払いしたときの毎月返済額(200万円÷36回=5万5000円ほど)が毎月返済してけると証明する必要があるわけです。
⑦個人再生の申し立て
財産の状況について報告する書類が作成出来たら、裁判所に対して個人再生手続きの申し立てを行います。
裁判所に対しては一定の予納金を納める必要があります(申立て手数料や官報広告費のトータルで3万円弱)
⑧個人再生委員の選任と打ち合わせ
個人再生の申し立てが受理されると、その日のうちに個人再生委員の選任が行われます。
個人再生委員とは、あなたの個人再生手続きを支援してくれる人で、普通は資格を持った弁護士です。
裁判所は再生委員として選任された弁護士の連絡先を教えてくれますから、1週間以内に連絡をとって打ち合わせを行う必要があります。
⑨履行テストの開始
個人再生委員との打ち合わせが完了したら、「履行テスト」が始まります。
履行テストとは、簡単にいうと「個人再生の手続き後にきちんと減額された借金を返済していけるか」をテストされるものです。
具体的には、個人再生委員が指定する銀行口座に対して、減額後の毎月の借金返済額と同じ金額を6か月間にわたって支払うことになります。
なお、履行テストのために支払った金額は、個人再生委員に対する報酬として扱われることになります。
⑩裁判所による個人再生手続き開始の決定
履行テストと並行して、申立てから4週間前後のタイミングで、裁判所は「個人再生手続きの開始決定」を出します。
このとき、官報にあなたの情報が掲載され、あなたの債権者に対して異議申し立てなどを行うように公告が行われることになります。
⑪債権者一覧表の提出
一定期間の官報掲載後、債権者からの異議申し立てがなければ、債権者が確定することになります。
確定した債権者を一覧表にまとめ、裁判所に提出します(書類作成は専門家が行ってくれます)
⑫再生計画案の作成と提出
ここまでで借金の総額が確定していることになりますから、その金額に基づいて「減額後の借金の金額と、その返済計画」を作成して裁判所に提出します。
⑬再生計画の認可(=手続き完了)
提出した再生計画に問題がなければ、裁判所は「再生計画認可の決定」を出します。
この決定が出た時点で、あなたの借金の減額が確定することになります。
(多くの場合、ここまで手続きが進むまで半年程度がかかります)
⑭再生計画に基づいて弁済を開始
裁判所に認可された再生計画に基づいて、毎月の返済がスタートします。
返済期間は上でも見たように36月間(3年間)となります。
もし返済が滞ってしまうと、せっかく認可された再生計画が取り消されてしまう可能性がありますから、返済に遅れが無いようにしましょう。
個人再生と住宅ローン
カードローンなどを利用しすぎて返済が難しくなり、債務整理を検討している方の中には、住宅ローンの返済もしないといけない…という方もいらっしゃるでしょう。
住宅ローンは、他の借金と比べるとやや特殊な性質がある借り入れですが、債務整理によって減額を受けることは可能です。
しかし、もし住宅ローンを個人再生などの方法によって債務整理した場合には、借金の債権者(住宅ローンを組んだ金融機関)は、住宅ローンに設定されている抵当権(普通は購入したマイホームにひもづいています)を実行してきます。
そうなると、結果的にマイホームを手放さなくてはならないという事態になってしまうので、注意が必要です。
マイホームを手放すことなく個人再生する方法
ここまで読まれて「借金を減額してもらうためには、マイホームを手放さざるを得ないのか…」とがっかりされた方もいらっしゃるかもしれませんが、あきらめることはありません。
個人再生では「住宅ローン特則」という特別な手続き方法があり、この方法を使えば、「住宅ローンについてはこれまで通りに返済する代わりに、マイホームに住みながら、住宅ローン以外の借金を減額してもらう」ということが可能になるのです。
例えば、消費者金融A社から100万円・B社から200万円・住宅ローンが2000万円あるという人の場合を考えてみましょう。
この人が住宅ローン特則を使って個人再生を行った場合、住宅ローンについては残高は変わりませんが、A社とB社の借金合計300万円については、減額をしてもらうことが可能になるのです(この場合、200万円を減額して100万円を払えばOKとしてもらえます)
住宅ローン特則を使った個人再生手続きは、法律的な知識が必須になりますから、弁護士などの専門家に相談しながら手続きを進めていくようにしましょう。
自己破産の手続きの流れ
最後に、自己破産の手続きの流れについて解説します。
自己破産では借金のすべてを免除してもらうことが可能となりますが、ブラックリストへの登録期間が10年間と長い(任意整理や個人再生では5年間です)などのデメリットもがあることも理解しておく必要があります。
なお、自己破産の手続きは、「手続き開始時のタイミングで、にあなたにどのぐらいの所有財産があるか?」によって次の2つに手続き方法が分かれます。
- 同時廃止による自己破産手続き
- 管財事件による自己破産手続き
ごく大まかに言うと、マイホームなどの所有財産がある人は管財事件、家財道具などしか財産がない方の場合には同時廃止事件として手続きが行われることになります。
(どちらの手続き方法が選択されるかは、裁判所があなたの具体的な状況を見ながら判断しています)
実際に申し立てされる自己破産手続きのほとんどが同時廃止事件として扱われますので、以下では同時廃止の手続きの流れについてみておきましょう。
同時廃止の手続きの流れ
同時廃止の手続きは、その名の通り「裁判所に自己破産手続きの申し立てがされたと同時に、免責を認める」というもので、非常にシンプルです。
※専門家との相談~受任通知の発送までは任意整理や個人再生と同様です。
あなたが所有している財産や、家計の状況について裁判所に対して報告する書類を作成し、申立書と一緒に提出します。
裁判所に自己破産手続きの申立書を提出すると、その日のうちに裁判官との面接が行われます(即日面接といいます)
書類に不備がある場合や、借金をするに至った経緯が特殊である場合には裁判官による審尋が行われることもありますが、多くのケースでは問題なく手続きが進んでいきます。
最終的に「免責審尋」という5分程度の本人への確認が行われた後、1週間後には裁判所から免責許可の決定が出されます。
免責許可の決定が出た時点ですべての借金は免除され、手続きが完了することになります。
まとめ
この記事では、債務整理手続きの大まかな流れについて、具体的な事例をあげながら解説いたしました。
本文でも見たように、債務整理の手続きは弁護士や司法書士といった専門家に相談して進めることによって大幅に労力を省くことが可能となります。
実際、現在裁判所に対して申し立てられている債務整理は、ほとんどのケースで専門家に依頼して手続きすることが前提となっています。
専門家に相談する場合、初回相談(多くのケースで料金は無料です)の場であなたにはどの債務整理の方法が適しているのかや、手続きの大まかな流れについても解説してもらえます。
もちろん、「そもそも自分には債務整理が必要なの?」という段階の方も心配ありません。
無料相談の場で「やっぱり自分で頑張って完済を目指す」という選択をすることも可能ですから、リスクなく相談することができますよ。
コメント